宮﨑 譲(東北大学)

第8期日本熱電学会会長就任挨拶

宮﨑 譲(東北大学)

―次の時代の熱電学会に向けて―

このたび、日本熱電学会の会長に選任されました。身に余る光栄であると同時に、これまで本学会を築き、発展させてこられた諸先生方の後を受け継ぐ責任の重さを感じております。会員の皆様のご協力をいただきながら、学会のさらなる発展に微力を尽くしてまいりたいと存じます。

日本熱電学会は、熱電変換研究会の時代から今日に至るまで、多くの先達のご尽力によって着実に発展してきました。学術講演会や研究会の充実、学会誌・欧文論文誌を通じた研究成果の発信、産学連携や国際交流の推進、日本学術会議協力学術研究団体への指定、独立した学会事務局の整備など、歴代会長をはじめ多くの会員の皆様の努力によって現在の基盤が築かれています。これまで学会の発展に尽力されてきたすべての方々に、心より敬意と感謝を申し上げます。

一方、社会と学術を取り巻く環境は大きく変化しています。日本では人口減少が進み、多くの学協会で会員数の減少が共通の課題となっています。本学会もその影響を免れることはできません。しかし、単に会員数という数字を維持することだけでなく、熱電に関心を持つ研究者、技術者、学生が集い、新しい研究や技術を生み出す魅力ある場であり続けることが、より重要であると考えています。

そのためには、まず「熱電」の裾野をさらに広げる必要があります。従来のゼーベック効果やペルチェ効果を中心とした熱電変換に加え、スピンが関与する熱電現象、横型熱電効果、さらには従来とは異なる原理に基づくエネルギー変換など、周辺領域では新しい研究が次々と生まれています。こうした研究者にも本学会を研究交流の場として活用していただき、異分野との融合を通じて新しい「熱電」の姿を育てていきたいと考えています。

国際化も重要な課題です。世界に目を向ければ、熱電研究は欧米のみならず、アジア諸国でも急速に発展しています。日本熱電学会の活動に関心を持つ海外の研究者も少なくありません。外国語による情報発信には相応の負担を伴いますが、ホームページや学会誌などを通じた英語での発信を少しずつ充実させ、海外の研究者、特にアジアの研究者にとっても参加しやすい学会を目指したいと思います。

そして、何よりも学会の将来を担うのは若い世代です。学生や若手研究者が本学会に参加し、研究成果を発表するとともに、異なる分野や世代の研究者と交流することによって、「この分野で研究を続けたい」と思える環境を整えることが重要です。若手研究者を対象とした表彰制度のさらなる充実や、活躍・交流の場を広げる仕組みについても検討していきたいと考えています。

同時に、熱電研究をさらに発展させるためには、個々の研究室の努力だけでは実現が難しい大型研究プロジェクトにも、学会として積極的に取り組む必要があります。材料研究からデバイス、システム、応用までを結び付け、産学が連携して大型研究資金の獲得を目指すことも重要です。また、熱電変換技術が社会に広く普及するためには、新しい応用分野を開拓し、市場そのものを広げていく視点も欠かせません。学術的な可能性と社会的なニーズの双方を見据え、新しいアプリケーションの創出につながる議論を活発にしていきたいと思います。

これらの課題を具体的に進めるため、今期は副会長の方々に中心となっていただき、「国際化」、「人材育成」、「大型予算獲得」をテーマとするタスクフォースを設け、継続的に検討を進めていく予定です。新しい執行部のメンバーとともに、課題を一つずつ具体的な形にしていきたいと考えています。

学会は、役員だけで成り立つものではもちろんありません。研究者、技術者、企業の皆様、そして学生を含むすべての会員が参加し、それぞれの立場から知恵を出し合うことによって初めて活力ある組織になります。これまで培われてきた日本熱電学会の良き伝統を大切にしながら、新しい研究領域、新しい世代、そして海外の研究者にも開かれた学会へと歩みを進めていきたいと思います。

会員の皆様には、今後とも学会活動への積極的なご参加とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。